誰も興味ない ⑱大阪の安宿
人生の "半分、親友"
な私達が常連だった大阪の安宿のお話。
ありゆりは高校・大学時代、足しげく大阪に通っていた。
一泊二日の小旅行、貧乏な学生だった私達は、少しでも滞在費用を削りたかった。
そして見つけたのがその宿。
桁外れな安さでは危険度が高すぎるので逆に手が出なかったが、
そこは黒ギリギリのグレーゾーンといったところ。
注意すべきはそこへ辿り着くまでの道のりだった。
最寄駅から10分ほどの道すがら、
大きな駅で、夜でも人が多いのだが、
宿までのラスト3分は大きな通りを曲がり、小道へ入らなければいけない。
曲がった先は、さっきまでの人気がウソみたいに静かで暗くなる。
ちらほら人はいるのだが明らかに様子がおかしい。
人の顔は見えないほど暗い。
初めてその宿を利用した時、
地図を見ながら進むため急ぐこともできず、
大通りを曲がってからの3分は経験したことのない恐怖との戦いだ。
何が怖いのかも分からない。
ただ何かが普通と違う、直感で恐怖を感じた。
ギューギューにくっつきながらやっとの思いで宿に到着した。
宿自体も決してきれいではない。毛布も埃っぽく、天井の一部には偽物のツタのようなものがオシャレに絡みつけてある。不気味だ。
ありゆりは口を合わせてこう言った。
「もう二度とこの宿に泊まるのはやめよう。」
ただ人間は忘れる生き物である。そして慣れる。
次も、その次の大阪旅行も、そこに滞在した。
2回目からは生けるGPSありが道のりを完全に覚えていたため、
小道に入るスタートラインで、せーので一斉に走り出す。
ある時なんかは、性別がわからない人にありのカバンを狙われ、宿まで逃げ切ったこともあった。
時には大きな声を出し、威嚇しながら進んだ。
すべては命を守るため。
毎回そんな恐怖を感じながら、宿に到着するにもかかわらず
旅先では必ず、コンビニに行きたくなってしまうのがありゆりだ。(誰も興味ない 女子旅編をみて頂きたい)
フロントで最寄りのコンビニを教えてもらったら、約50メートルの距離を7秒くらいで快走。
無事ルーティーンを守ることができ、一安心。
数年後…
ありゆりちよの3人で格安大阪旅行に出向いた際、その宿に似た風の宿を訪れた。ちよは泣きながら宿をかえてほしいと願うこととなる。
文章 あり
ゆり
既読 ちよ
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