ありゆりちよが出会ったユニークな人々①
ありゆりちよが大学の卒業前にイタリアに貧乏旅行した時に出会った、
ツアーガイドのケイコ。
彼女のおかげで旅が何倍にも楽しくなった。
ツアーガイドのケイコとは日本の空港ではじめましての時からなぜか馬が合った。
海外旅行なのにもかかわらず、ラゲージが国内旅行二泊三日並みに少ない私達にツッコミを入れてきたのである。
ありゆりちよは私達のユーモアを分かってくれる人なのかもしれないとドキッとした。
行きの飛行機は、ケイコの隣。
慣れない長いフライトに比較的体がデカめの私達はげんなりしてきたその時、
機内食の時間。
こちらもおいしいわけはなく、何となく食べてちらっとケイコのほうを見ると、
ちっとも機内食に手をつけていない。
気分でも悪いのかと尋ねてみると、
機内食は食べたくないと子供みたいな返事が返ってきた。
旅慣れしているはずのツアーガイドさん。
無難なパンやフルーツも食べないなんて。
フィンランドのヘルシンキで乗り継ぎ無事イタリアに到着。
初めての夜、あり1人部屋、ゆりちよが一緒の部屋になった。時差で早くから目覚めてしまった、3人はすぐさま集合した。そして、朝の準備をする時間にありが部屋に帰ると、カードキーが反応しない。
どうしようもないのでフロントに頼んで開けてもらおうとすると、
ケイコが同じようにフロントマンに何か頼んでいた。
鍵の調子が悪いか何かだったと思う。
ケイコはだからイタリアのホテルはイヤダと吐き捨てるように言った。
その内容よりも私達をびっくりさせたのは冬のイタリアの夜にかなりの薄着だったこと。
室内だったとしてもそんな薄着でうろついている人は見ない。
そんな薄着でどうしたのか尋ねると、
なんとパジャマを忘れたと言う。
旅慣れしているはずのツアーガイドさん。
裸で寝ていると聞いて、気の毒になった。
自由時間になると、ケイコは一目散にパジャマを買いに走っていった。
各名所には現地のツアーガイドさんも同行した。
現地のツアーガイドさんにはいろいろなタイプがあって、
日本人ツアーガイドに任せて、ただ集団の後ろについてくるだけの人。
それから日本人のツアーガイドさんの横に常について、
一生懸命名所の説明をしてくれる人。
このあたりはさすがツアーガイドさん。
ケイコはそのどちらの対応もとてもすんなり、空気を読みつつガイドしていた。
ポンペイの現地ツアーガイドはザ・イタリア人男性だった。
仕事には熱心な後者タイプで、一生懸命遺跡や歴史を説明してくれた。
すぐ隣でケイコが通訳するのだが、男女が交わる館あたりでだんだんと距離感がおかしくなっていることに気づく。
説明以外をケイコに話していて、明らかに口説かれている。
私達はケイコを守らねばとおせっかいにもケイコの周りを固める。
ケイコに大丈夫だったか尋ねると、
なんか男女のところ説明が長かったねーとあっけらかんとしていた。
ここもさすがツアーガイドさん。
さらっとうまくかわしていた。
周りを固める必要など全くなく、私達はただの仕事の邪魔だった。
また水の都べネチアの綺麗な建物や風景を楽しんでいた時、
ありに鳥の糞が落ちた。
それを見たケイコが、“運(う〇〇)”がついたのよと励ましてくれた後、
とっておきのエピソードを披露してくれた。
小学生のころ、バレンタインにケイコが好きな男の子にチョコを渡そうとしたその時、
チョコの上に鳥の糞が落ちてきたという。
もちろんその男の子とはうまくいかなかったとのこと。
なんて興味深い人なんだ、ケイコ。
海外をツアーで旅行することがあれば、
絶対ケイコじゃないと嫌だと言いながら帰路についた。
一週間ほどの短い期間だったが、
ありゆりちよはケイコをいたく慕い、サヨナラの時はとても切なかった。
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