BEST FRIENDS

30代 3人組 stillキラキラLIFE

番外編 もう一人の女子部員②

人生の "半分、親友"

な私達の番外編 4人目の異色な女子部員のお話。その②。

 

 

弾丸温泉旅行は私達にとって沖縄の次に定番化していた旅先で、

格安温泉地へのカニ食べ放題バスツアーによく参加していた。

 

勢いよくバスに乗り込むのだが、

山道が続いてくると軽く全員バス酔い状態になるため、

後半は各々音楽を聴く、眠るなど静かなものだ。

ゆりが、山々の紅葉を素敵だと叫ぶ!

これが現地到着に近づいている合図で、座席周りを片付ける。

 

今回はその温泉地への旅に4人目の女子部員はるも参加した時の話。

 

バス酔いを乗り越え、待ちに待ったカニの食べ放題を終えた満腹の4人は、

お風呂に入ろうといったん部屋に戻った。

準備をすませ、部屋を出たところで、

はるがタオルを忘れたと一人部屋に戻った。

 

少し遅れて、ゆりも当時旅先には肌身離さず持ち歩いていた使い捨てカメラを忘れたことに気づき、はるが数分前に戻った部屋に入った。

 

するとゆりの目に衝撃的な映像が飛び込んできた。

 

ゆりは事態を把握するまでにかなりの時間がかかった。

―ん?忘れ物を取りに行くと言っていたが。

―ん?手に持っているものがそうなのか。

―ん?あれは一体なんだ。

―ん?まさか、あれがこんなところにあるはずがない。

―まさか、まさか、持参してきたのだろうか。

―あれを使っているということはつまり。

 

そう、お察しの通り、はるがう〇〇をするために忘れ物をしたと嘘をつき、

部屋に戻って用を足したのち、なんと持参した消臭スプレーで消臭していたのだ。

 

ありちよはというと、う〇〇するからと宣言してトイレに向かうスタイル。

ゆりは少し環境がかわるとお通じがうまくいかなくなってしまうため、発言する機会は少ないが同じようなスタイル。

 

なのではるの一連の行動には驚きが隠せなかった。

はるはゆりに気づくと慌てて、ありちよには言わないでと言ってきたが、

ゆりは地が悪魔なので、大笑いをしながらありちよに追いつき、早速面白い話をシェア。

 

どちらが多数派で少数派なのか、私達にはわからない。

だがこの後、機嫌を損ねたはるから、

温泉につかっている間中、エチケットについての講習を受けることとなった。

 

楽しい旅の思い出。

 

 

文章 あり

ゆり

既読 ちよ

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誰も興味ない ⑮大好き沖縄

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人生の "半分、親友"

な私達の毎年恒例だった沖縄旅行のお話。

 

高校の卒業旅行を皮切りに、

社会人になり離れて暮らすようになっても、ゆりが外国に旅立つまで、毎年旅行にいった。

そして山に行きたいありの意見は、海に行きたいゆりにかき消される。

旅先は決まって、沖縄だ。

いつもお値打ちな9月のタイフーンシーズンに行っていたが、

今まで便が欠航になったことはなく、

現地でひどい天気だったこともない。

そう、ゆりは晴れ女だ。

 

今となっては家族でいろんなところに旅行しているちよだが、

高校で沖縄に行くまで飛行機に乗ったことがなく、

初めての飛行機には、お守りを持参してきた。

そしてそのお守りを両の手で包み、大きな声でお祈りをしていた。

席が隣だったありゆりは他人のふりをするのに全力を注いだ。

 

年頃な同年代の女の子たちは海に行くのにばっちり化粧をして、

穏やかにリラックスした時間を過ごすのであろう。

が、私達は運動部出身。

ゴーグル片手に海に向かう。

 

浅瀬から沖へ等間隔に、はんぺんのように浮かんでいる、

2メートル正方の浮き。

年頃の男女がこのはんぺんの上で日焼けや談笑を楽しむ中、

私達ははんぺん上の2メートルの助走でどれだけ水面を走る事が出来るかを追求。

このはんぺんは浮力で海に浮いているだけなので、とても不安定で、

水面を走るどころか助走の時点でバランスを崩し、倒れてしまう人がほとんどだと思われる。

私達は時間の許す限り挑戦し続けた。

申し訳程度にした化粧は海水に流され、ちよのまゆげはたちまち姿を消し、髪はワカメのように顔にはりついたが、なりふり構わずはんぺんの上を走り続けた。

その結果ありが打ち出した記録、2歩。

勢いよくはんぺんから飛び出し、水面をトントンと蹴ったあと、

一生懸命足を動かしながら海の中に消えていく姿は何ともかっこよく、

この最高記録に、皆が拍手をおくった。


 

ご飯を食べる時間さえ惜しみ、

バナナボートに何度も乗った。

振り落とされたら、水着が脱げるかと思った!と難癖をつけ(ありは一度、実際に水圧でパンツが脱げるアクシデントを経験している。)、

振り落とされずに帰ってきたら、スリルが足らなかった!と文句を言った。

 

もうそんな遊び方は出来ないし、

それぞれに家族が出来てなかなか足が遠のいてしまっているけれど、

もう一度ありゆりちよで行きたいね、沖縄。

 

文章 あり

ゆり

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誰も興味ない ⑭結婚

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人生の "半分、親友"

な私達の晴れ舞台のお話。

 

個性的な性格や態度で異性からの人気が全くなく、

加えて三位一体すぎたため、恋人の存在の必要性を感じていなかった。

そんな恋愛沙汰に縁遠く、恋に奥手だった私達も、

なんとかパートナーが見つかり、それぞれが結婚することとなる。

 

私達の間にはいつの間にか暗黙のルールがあった。

それは、ありゆりちよ以外で仲の良い人、

またその人らとの楽しかった出来事の話は出来る限り避ける。

嫉妬心を生まないためだ。 

なぜだか素直に喜べず、場の雰囲気をとにかく悪くなる。

 

大抵親友ならば、結婚相手や、結婚までのみちのりを詳しく知っているだろう。

私達はむしろ、そういった類の話を聞くのが怖いので、

それぞれの相手についての情報は皆無。

結婚式でのプロフィール動画ではじめて相手の素性を知ることとなる。

 

式当日は、かなり複雑な心模様。

友達を取られてしまうような気持ちになる。

そして、今までのように楽しい時間を共有出来なくなってしまうかもしれないという不安。

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残りの2人はソワソワしながら、会場に向かう。

お互いの友人代表スピーチはもちろん私達なんだが、嫉妬心むきだしの文章しか出てこないのだ。

親友の私達が結婚を祝福してあげなければ、悲しむだろう。

誰よりも本当は祝ってあげたい!


だから頑張って、マイクの前に立つ。


「結婚おめでとう」

はじめて言うこの言葉に感極まり、号泣。


新郎は気まずそうな顔になり固まる。


あとは何を話したか、忘れちまったが

結婚式で、私達はお互いの新しい家族をようやく歓迎。


結婚、そして出産と家族が増えるたびに、

3人の時間はどんどん減っていく。

寂しい。


だから、3人で始めたこのブログにはとても感謝している。

まず、記事を書くのが素直に楽しいし、

ブログの打ち合わせと称して、3人で集合する機会が前よりも増えた。

 

紆余曲折あり、それぞれが忙しい日々を送っているが、

不安とは裏腹に、まだまだ3人で楽しいことが出来ている。

 

 

文章 あり

ゆり

既読 ちよ

 

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ゆりの日常 名を名乗れば

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日本人が海外へ行き、自分の名を名乗ったとき、

馴染みのない名前に加えて発音の違いで、正確に聞き取ってもらえないことがある。

面倒くさいが、ローマ字で一文字ずつ伝える必要がある

 

そしてはるばる日本にやって来たゆりのハズバンドも、名を名乗る時に毎回手こずる。

彼は、とにかく複雑な名字をしていた。

いったいどれだけの人が正確に彼の名字を言えただろう。

 

聞いてダメなら見てみよう。

ローマ字表記を見てみる。

読めない。

カタカナで書かれたものを見てみる。

読め…た。

が、噛む。

そして忘れる。

ありとちよは未だにスラスラ読めない。

 

ハズバンドは必要な時以外は、名前しか名乗らない。

彼は名字を名乗った時のロスタイムをなくしている。

 

だが、やはり名字が必要なときもある。

 

日本の文化、安産祈願。

ゆりは、電話で事前に予約をし、ご祈祷に必要な詳細を伝える。

ハズバンドの名前を聞かれたので、外国人です、と前置きした後、

ゆっくりした速度で答える。

無言電話になる。

想定内!

もう一度、もっとゆっくり伝える。

……もう一度お願いされたので、

もう一度、ゆーっくりと、

結局来た時に紙に書いて欲しいとのことで、電話を終える。

 

当日。

ハズバンドの名前を紙にカタカナで書き、

それを指でなぞりながら再度伝えた。

 

儀式が行われる空間に通され、座ってしばらくが経ち、神主さんが現れた。

 

神主さんがご祈祷し始める。

そしていよいよハズバンドの名前が読み上げられるとき

何度も確認し練習してくださったのであろう。

 

だが、一文字目でつまづいてしまった!

そこからもうちっとも進まなくなってしまった。

何度か仕切り直してくれたものの、一文字目から一切進まない。

最終的にはゴニョゴニョふふふん

それっぽく読み上げ、

流れをそれ以上止めないように配慮してくださった。

 

 

安産祈願の御利益もあり、無事元気すぎる娘誕生。

同じ神社でお宮参りの電話予約をした際、

「あーあの時の。」と、私達の事を覚えていた。

複雑な名字が心に残ったのか、外国人だったからかは定かではないが、

歓迎してくださり、お宮参りも無事終えた。

 

 

 

そう、 私達は夫婦別姓です。

 

 

文章 ゆり

編集 あり ゆり

既読 ちよ

 

 

 

 

 

誰も興味ない ⑬大学受験への道編

 

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人生の"半分、親友"

な私達が受験生だった時のお話。

 

奇跡的に高校3年で同じクラスになった、私達。

部活を引退してからも、ずっと一緒におふざけをすることが出来た。

だが、そんな私達に立ちはだかった壁。

 

大学受験

 

夏が過ぎ、文化祭で盛り上がった後

周りは一気に受験モードにかわっていた。

 

ありとゆりは要領がよく、問題なくその波に乗っかる。

何事も楽しむがモットーの私達は、

単語帳をいつも持ち歩き、会話はなるべく英単語をおりまぜるという、

ルー大柴法を取り入れた。

 

ありゆりは語学系志望。

ちよは不明。

 

もちろん常にありゆりの側にいたちよだが、

ちよだけは受験の波に流されなかった。

 

同じクラスになって、ちよがどれだけ勉強してないかを知った。

ちよが授業中先生に当てられる度、

「ちよちゃん答えられるかな。」というありゆりの心配をよそに、

質問にかぶせる速度で、「わかりません。」と言うのだった。

 

 

その頃、

長期戦が苦手なゆりは、大学推薦を貰うことにした。

ゆりは毎日昼ごはんの時間もルー大柴法を用い英単語を勉強した。

ありは自分の時間を削ってはゆりに問題を出し続けた。

ちよはいつも通りゆっくりとトマトを残しながら弁当を食べていた。

 

そんな受験の波に逆らっていたかのように思えたちよが突然、

ゆりが推薦を貰うなら私も欲しいと言い出した。

 

お願いされた先生は渋っていたが、

波に逆らっていたちよが動き出すのなら、と推薦を許可。

 

推薦用紙を前に先生は悩んだ。

 

 そして意を決して、私たちのもとに言いに来た。

「ちよのいいところが思いつかない」

 

 

ひどッ

 

私達3人は思わず口にしたが、待てよ。

 

…… ちよのいいところ……

 

勉強に不真面目だった、ちよ。

 

 

 

ありとゆりがひねりだした、

大好きな親友のいいところ。

受験にとってプラスになるところ。

それは、

 

「…字が綺麗、かな…」

 

先生は首を傾げながらも、

なるほど、とりあえずそれを書くことにすると職員室へ戻っていった。

 

 

その後、ゆりは大学受験を終え、ちよは普通受験へと駒を進めるのだった。

 

 

文章 あり

ゆり

既読 ちよ

英単語センター1800【改訂版】 (東進ブックス 大学受験)

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ありの日常 仲良し兄弟

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子ども2人をつれて、近所の公園に遊びに行った日の話。

 

小学3、4年生くらいの女の子に、長男の通称たー(年長)は絡まれていた。

遊びたくない!と言えばいいのに断れないたーは、

苦笑いをしながら、避けるように遊んでいた。

 

その頃次男のおーちゃん(年少)は、女の子を完全に無視して、自分の遊びをしていた。

星のTシャツを着ていた、たーは、「星くん」と何のアレンジもないあだ名をつけられ、付け回される。

顔色はどんどん曇ってゆく。

見守っていた旦那も、そろそろかわいそうになり、手助けをしようとしたその瞬間。

 

おーちゃん、登場。

 

そして女の子に向かって叫んだ。

 

「今度たーに変なこと言ったらぶっ殺すぞ」

 

そのまま女の子は立ち去ったのだ。

 

たーはおーちゃんに感謝した。

兄の笑顔を取り戻したおーちゃんは大好きなたーと一緒に遊ぶことが出来てルンルンだ。

 

これからも、兄弟助け合って生きていってほしいとありは願う一方、

言葉遣いの教育を見直すことを決意する。

 

 

文章 あり

編集 あり ゆり

既読 ちよ

 

ちよの日常 掃除にかける思い

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ちよの家はいつ遊びに行ってもモデルルームのようにピカピカだ。

そう、ちよは掃除を怠らない。

片付けをしないと気が休まらないのだ。

 

例えば食器がシンクに1枚あったら洗い、また1枚出ては洗い。

家族が入浴を済ませると、浴槽はもちろん天井、棚、床、壁を洗い、しっかり水をきる。

 

 

そんなちよだが、決して潔癖症なわけではない。

昔のちよは掃除というものから縁遠く、

埃アレルギーのありはちよの部屋に遊びに行くと鼻水が滝のように流れ出た。

積もるティッシュの山はもう見慣れた光景だった。

 

それに、他の人の家がどんなに汚くても気にならないという。

 

ちよの掃除したい意欲はどこからきているのか、

ちよの性質から考えてみよう。

 

ちよは影響されやすいタイプだ。

自分がいいなと思った情報を信じ、それを徹底的に決行する。

だが、他にいい情報が入ればいとも簡単にそちらにシフトする。

 

たまに数年前とは言っていることが別人のようにガラッとかわることがある。

そしてちよは常に今を生きているので昔自分が言っていたことや思っていたことを覚えていない。

一度ちよの頭の中で選択された情報は、新たに有効な情報が入るまでは絶対で、

他の人の意見は耳に入らない。

 

そしてちよはブランド物を好む傾向にある

それを大事に長い間愛用する。

 

この2点から、ちよは掃除魔にかわったのだと思われる。

マイホーム=高い買い物→大事にする

家を長い間綺麗に保ちたい=毎日掃除をする

 

ちよは来年4月から育休より仕事復帰する。

掃除に同じだけの時間を費やすことができなくなったとき、

今度はどんな別人格になるのかと、ありゆりは陰で噂する。

 

文章 あり

   ゆり

既読 ちよ

 


 

誰も興味ない ⑫奇跡編

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人生の "半分、親友"

な私達が起こした奇跡のお話。

 

クラス替えはいつもドキドキする行事の一つだ。

仲良しの子と同じクラスがいいなとか、

好きな子と同じクラスがいいなとか。

 

そしてこれが私達にとって最後のクラス替え。

 

皆がそれぞれの思いを抱えて新学年を迎える中、ミラクルがおきた。

 

私達が通っていた高校の、クラス替え発表の仕方は少々変わっていて、

担任の先生が新しいクラスを口頭で、あいうえお順に生徒ごとに読み上げていく式。

 

聞き逃したり、聞き間違えたりしたら終わりだ。

そして担任の先生のタイミング次第なので、クラスによって発表に時差が生じる。

 

私達の中で一番初めに新しいクラスを耳にしたのはあり。

早速教室を抜け出しゆりちよの発表はまだか確認しに走った。

 

先生から読み上げられ新しいクラスを知ったちよは、

落ち着いた様子で、窓にしがみついて今か今かと待っていたありに手でサインを送った。

 

同じクラス!親友2人が同じクラス!!

 

最後はゆり。

学年主任が担任のクラスだったゆりは、いつも通りの担任の話の長さにソワソワがマックスだった。

 

窓の外で興奮しているありちよの様子から、

2人が同じクラスになったということは一目瞭然だった。

 

ゆりはうらやましい気持ちでいっぱい。

2人は同じクラスか。いいな。

 

私だけ違うクラスになったら絶望だな。

 

さらにもう1人の女子部員はるも同じクラスだというニュースが飛び込む。

 

さらに悲しい気持ち。

なぜか自分は違うクラスであるに違いないと思ってしまうネガティブなゆり。

 

そして学年主任の担任の先生の話がやっと終わり、クラス発表。

ゆりも同じクラスだった。

 

同じクラス。

親友4人が同じクラス。

 

想像もしていなかった奇跡。

 

間違いなく高校生最後の1年、私達がよりハッピーガールズになった事は言うまでもない。

 

文章 あり

   ゆり

既読 ちよ

 

 

 

 

 

 


 


 

ゆりの日常 おばあちゃん

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ゆりは知らないおばあちゃんに突然話しかけられることが昔から多々あった。

 

例えば、バス停でバスを待っていると、

すぐ前に並んでいたおばあちゃんが突然バッと振り返り、

 

「あんたぁ背がデカいねぇ。」

 

と何メートルも先まで轟くような声で言われた。

 

学生の頃は背が高いことが一番のコンプレックスだった。

それを、はじめましてのおばあちゃんが、

わざわざ声に出さなくても、心の中にとどめておいてくれればいいのに、

目が合うよりも先に、言われたことがあった。

 

こんなシチュエーションは数えきれない。

 

そして娘ができてから、おばあちゃんからのビックボイスつぶやきはさらに増した。

 

おばあちゃんは赤ちゃんが大好きだ。

赤ちゃんを見ると、誰の子だろうが近寄り、声をかける。

 

ゆりのハズバンドは外国人なので、娘はハーフだ。

ゆりは、娘(そんなにハーフ顔ではないと思っている)を、ハズバンドではなく、どちらかというとゆりに似ていると心から思っている。

 

ところが、世間のおばあちゃん達はそうは思っていないようだ。

 

ゆりが娘を抱っこしていると決まって、

「あらぁ ハーフみたいなお顔ねぇ。(ゆりを一瞥)お父さんに似ているのねぇ。

 

「あらぁ 外国人さんみたいなお顔ねぇ。(ゆりを一瞥)お父さんがイケメンなのねぇ。

 

「あらぁ お人形さんみたいねぇ。(ゆりを一瞥)・・・

と、かたくなにゆりに似ている説を否定する。

 

確かにゆりの顔は平たいし、

パッとみるとのっぺらぼうに見えるくらい、

目と鼻と口の顔の面積に占める割合がとても少ない。

 

 

生まれてくる前はそんなゆりの顔に似ないといいなと思っていたが、

いざ面と向かってはっきりと全く似ていないと否定されるとやはり心は複雑。

ゆりはどちらかと言えば自分に似ていると信じているためよりつらい。

 

おばあちゃんとのほっこりするはずのコミュニケーションに、ゆりフラストレーション。

 

そして、ゆりは強くなり、ワンアップした。

 

 

文章 ゆり

編集 あり ゆり

既読 ちよ


 

ありのお産 帝王切開だけども

昨日のプリキュアが帝王切開の話だったらしく、

「帝王切開はつまずきじゃない。立派なお産よ。」

というフレーズにツイッターがざわついていた。

 

ありはお産を思い出した。

 

ありは息子2人とも帝王切開で出産した。

1人目  我が子はお腹の中で逆回転をはじめ、陣痛から丸2日出て来ず、緊急帝王切開となる。

 

2人目  1人目が帝王切開だったから、自然分娩のリスクを避け、予定帝王切開。

 

ありは、出産の痛みをすでに忘れているが、

ありのお腹にはくっきりと手術の後が残っている。

 

ありは、帝王切開を経験することができた。

決して帝王切開に対し後ろめたさはないが、

欲を言えば、やはり自分も普通分娩してみたかったな、と思うのだ。

 

お股をきる痛みだとか、おトイレに行くのが怖いとか、

そういう昔から聞いていた出産体験話に憧れがあったのかもしれない。

 

 

最後の出産から4年後、

ありは少しだけこの痛みを体験できることとなる。

 

 

今年のゴールデンウイーク初日。

家族でプールにでかけた。

 

休憩所のところに暖かいジャグジーがあり、

ちょいとここひと休みと思ったところで、

あり、転落。

 

お股をジャグジーの角にぶつけ、負傷。

 

痛みに耐えながら帰宅するも、

出血に気づき、姉に付き添われながら救急病院へ。

 

ぶつけた場所が場所だけに、産婦人科に通された。

懐かしの分娩台の上で診療は始まった。

 

ありのお股は圧迫しても出血が止まらず、

ありは圧迫止血されるたびに悲鳴をあげた。

そしてついには縫うこととなり、

局所麻酔でまた悲鳴をあげた。

 

悲鳴をあげる度、ありの左手を姉は強く握ってくれた。

そして、「ゆっくり深呼吸して」と声をかけてくれた。

間違いなく、立会い出産と同じ情景だ。

 

処置後、ありは、おトイレに行くのが怖かった。

2度とお股は縫いたくないな。

 

そして自然分娩を羨ましく感じていたありは、自分の浅はかさにハッとした。

 

どんな出産も、

とにかく大変や。

 

文章 あり

編集 あり ゆり

既読 ちよ

誰も興味ない ⑪ちよのハイセンス

人生の "半分、親友"

な私達の部活のジャージを決めるに至るまでのお話。

 

私達の所属していた部活は、規律がゆるく、決まったジャージがなかった

大体、学年、性別ごとにジャージを揃えていたので、

仲良しの私たちも、もちろんお揃いを買いに走った。

 

このジャージを巡り、

センスというのは、人それぞれだと言うことを目の当たりにするのだ。

 

この話をするには、当時のちよのファッションについて触れておく必要がある。

 

ちよの私服を初めて見たのは、部活の新歓でボーリングに行ったときだった。

 

年頃の高校生は、当時の流行に沿ったファッションをして集合していた。

新入生なのにも関わらず、ちよは大御所のように最後に現れた。

ちよ、全身白いビッグシルエットのシャカシャカジャージを着て登場。

 

部員全員が固まった。

ちよに一言、「すごいね」と、先輩たちは声をかけた。

 

次にちよの私服を見たのは、学校の野外学習で山の方に泊まりに行った時だ。

 

山登りを皆で楽しみながら、歩いているところ、

ちよ発見。

 

緑の山の中に真っ白なちよが、シャカシャカと音を立てて歩いていた。

 

ありゆりはその姿を見るのが2回目だったので、さほどの驚きはなかったけれど、

周囲は怖かったのか、ちよは1人で山を越えていた。

 

その夜、ちよのクラスはソーラン節を披露した。

真っ赤なキャンプファイヤーの中に白く光るちよを見つけることはお茶の子さいさいだった。

 

ちよは決して目立ちたかったわけではないが、

ちよのファッションは皆の心に焼きついた。

 

そんなハイセンスなちよと同じジャージを選ぶのは、時間がかかった。

何度も何度も試着を繰り返し、店員さんにも野放しにされた。

ちよはやはり、白く光沢のあるジャージを好んだが

日本代表と同じジャージなら…ということで決着がついた。

よは意外とミーハーだ。

 

ありはMサイズを購入したが、

ありと背格好が同じなちよは、なぜか、デカいゆりと同じサイズを購入した。

そしてちよはビッグサイズのジャージを部活引退まで愛用した。

 

あれから10数年たったが、ちよは今タイトなファッションも着こなしている。

 

 

 

文章 あり

   ゆり

既読 ちよ

 

ちよの日常 聞いてみた

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ちよはとてもシンプルで平和だ。

今日も明日も明後日も、一緒。

月曜から金曜まで、すべて一緒。

 

ちよから送られてきた“携帯で調べごと”の文字。

無の境地に達したちよが、

SNSもやらないちよが、

何を調べるのか、ありとゆりはざわついた。

 

 

 

文章 あり ゆり

編集 あり ゆり

既読 ちよ

誰も興味ない ⑩私達の愛車編(高校時代)

人生の "半分、親友"

な私達の大事なママチャリのお話。

 

チャリ通(自転車通学)だった私達は、電車に乗ってどこかへ出掛けるという概念がなかった。

どこへ行くのもいつもチャリ。

決して挑戦するつもりはなかったけれど、

「チャリで日本横断もできただろう。」とありは言う。

 

最近では健康のためか、それとも流行りなのか、

男女問わずチャリで颯爽と通勤している人の姿をよく見かけるが、

「これは間違いなく私達が先駆けだ。」とゆりは言う。

 

 私達はチャリで数々の伝説を作った。

 

映画を見に行くのももちろんチャリ。

それにはまず、大きな橋を2本越えなければならない。

橋をこえるときは、チャリから降り、引きながら越える。

ここで一度心が折れる。

あまぎーごーえー (ちよの十八番)

 

2時間かけてチャリをこぎーの、

2時間映画見ーの、2時間かけて帰りーの。

心動かされる映画を見た後の帰り道は2時間無言だ。

2時間の映画に往復4時間は割に合わないと思うかもしれないが、

映画の世界に浸るのには好都合とも言えた。

 

ママチャリさんきゅー。

 

 

 そして隣りの隣りの区に住む友人宅へ遊びに行くときも、もちのろんチャリ。

時間配分を間違え、差し入れのケーキを地元で買ってしまい、

1時間弱ケーキの箱をかごの中でカタカタ揺らした事もあった。

が、チャリは無事にケーキを運んでくれた。

 

ママチャリさんきゅー。

 

映画館も、隣りの隣りの区も、1番近くに住んでいるのは決まってちよだったが、

なぜかちよはいつも不参加だった。

遠いと言っていたような気もする。

 

そして、チャリで長距離移動すると、

5回に1回の確率でありのチャリがパンクした。

そのたび自転車屋さんを探して走る事となり、長距離が超長距離となる。

 

ありは、はりがねをチャリのハンドル部分にからめ、

伸びた先端を星形にし、アンテナのように立てていた。

そしてキャサリンと名付け、入学当初から大切に乗っていた。

 

チャリなしでの長距離移動は考えられず、

何度もパンクと向き合いながら、

高校卒業までその愛車にお世話になった。

 

その後、時は金なりと気づいたのだろうか。

私たちはチャリから原付へと乗り換えることとなる。

 

 

 

文章 あり

   ゆり

既読 ちよ

ゆりの日常 ハズバンドと木笛

私のハズバンドは木笛を持っている。

 

アルゼンチン、ニュージーランド、そして日本とはるばる旅してきた木笛

(ハズバンドの生い立ち⁉はそのうち)

たまーに思い出したように吹き出す。

 

一時期とりつかれたように吹いていた時期があり、

「お願いだから夜は吹かないで。近所の人がびっくりするから。」

と、注意した。

癒しの音ではあるが、あまり聞き慣れていない音色のため夜聞こえてくるとただただ怖い。

 

ある日

「サンポニデル。」

と、夜7時ごろ出掛けて、

夕飯の準備ができたのに、なかなか帰ってこない。

 

腹が減って我慢できず先に食べ始めると、

何やらヒュルリーホーホーホーと遠くから聞こえてくる。

最初は近所の家のテレビのボリュームでけーなと思い、特に気にせず食べ続けたが、

音がだんだんと大きくなる。

近づいてくる。

 

信じたくはないが嫌な予感

 

 

 

 

ハズバンドが木笛をふきながら帰ってきた。

 

 

どうやら夜の公園で木笛の練習をしていたらしい。

 

 

文章 ゆり

編集 あり ゆり

既読 ちよ

誰も興味ない ⑨幻の映画編

人生の "半分、親友"

な私達が出演した映画のお話。

 

ちよは中学時代演劇部に所属していた。

演劇部に。

エンターテイメントに1番疎いちよが。

 

私達は事あるごとにそれをもとにちよをからかった。

だが、ゆりは密かにかっこいいと思っていた。

ムービースターになりたかったのだ。

 

ある日、部活を終えた私達は、

明日も学校で会えるにも関わらず、別れを惜しみ、

日が暮れた川の堤防でおしゃべり。

 

話題はひょんなことからちよ元演劇部の話になり、

強い憧れを抱いていたゆりは思いきってショートフィルムを作ろうと提案した。

 

暗闇での撮影であったため、映像がはっきりしていないことに後日気付く。

そしてその映画は幻となったのだ。

 

ドキュメンタリーなタッチでシリアスな青春を描く。

演じるのは自分達。限界に挑む。

 

監督・撮影  はる

原作・脚本  あり ゆり

主演  ちよ

出演  あり ゆり

 

重い荷物を抱える3人の少女たち。

ちよ、そしてありゆりは世知辛い社会を嘆き家出を決意する。

川のほとり、体育座りで泣きながらキズを分かち合う。

 

暗く人気のない堤防、

誰からともなく帰ろうと言い出し、

まずゆりが立ち上がり重い荷物(持っているものは通学カバン)を引きずりながら川辺を去る。

ありもそっとちよに声をかけ動き出す。だんだん姿が見えなくなる。

 

ちよは帰宅を渋っていた。

深くため息をつき、体育座りの膝っ小僧に目を落とす。

毛を抜き始めたそのとき、両側にフッと気配を感じた。

ありゆりが優しい笑みを浮かべて立っていた。

「みんなで帰ろう。」

「うん。」

 

エンディングの音楽と共に、私たちはカメラに向かってポーズを決める。

 

さっさと家に帰れ。

 

 

 

文章 あり

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